インキュベーターとは温度を一定に保つ機能を有する孵卵器を言葉の由来とする、起業に関する支援を行う者のことです。広義には既存事業者の新規事業を含む起業支援のための制度、仕組み、施設などを指します。

インキュベーターとして特に有名なのが、米国カリフォルニアに拠点を構えるYコンビネーターです。
Yコンビネーターは、優れたアドバイザーの助言により、AirbnbやDropboxなどの世界的ベンチャー企業を輩出してきました。ここではYコンビネーターの事例をもとにインキュベーターの仕組みを解説していきます。

世界的に有名なインキュベーターのYコンビネーターとは

Yコンビネーターはポール・グレアム率いるベンチャーキャピタルです。2005年の設立以来、1000社以上のベンチャー企業(スタートアップ)を支援してきました。

Yコンビネーターの特徴は、合宿形式の支援プログラムにあります。倍率3%とも呼ばれる選考を通って参加を認められた起業家は、3カ月間、シリコンバレーに滞在し、Yコンビネーターから助言を受けます。この3カ月間は文字通り寝食を忘れ、製品開発に没頭し、見込み顧客からのフィードバックを受けなければなりません。スタートアップ支援プログラムの最後にある投資家への発表会で高い評価を受ければ、事業資金の調達に成功し、会社を大きくできるのです。

Yコンビネーターの“卒業生”として、世界中に民泊のプラットフォームを展開するAirbnbや、ファイル管理・共有サービスを提供するDropboxといったサービスが知られています。その他にもHeroku、Redditといったテクノロジー系スタートアップを多数、成功に導きました。今では、Yコンビネーターの合宿プログラムを完遂したというだけで、投資家から注目されるケースもある程です。

インキュベーターの役割

インキュベーターやアクセラレーターは、起業家が抱える課題を支援する存在です。
起業家が抱える悩みは事業アイデアの創出、開発力、営業、デザイン、資金計画、人材計画と多岐に渡ります。

こうした課題を抱える起業家たちのためにインキュベーターやアクセラレーターは、駆け出しの起業家が陥りがちな失敗を避けるよう助言をしたり、パートナー企業や投資家とのパイプ役になったりするのが主な仕事です。支援する起業家へ直接投資する場合もあれば、助言のみを行う場合もあります。

Yコンビネーターが実践する起業を成功させるための方法論

Yコンビネーターの成功の秘訣は、助言をするメンターの存在が挙げられます。特に、Yコンビネーターの共同創業者であるポール・グレアムは、自身が起業家・プログラマーでもあり、大きな影響力を持っています。芸術を学んだエッセイストでもある彼は「最も良いアイデアは最初悪いアイデアに見える」などの含蓄のある助言を残しました。

ポール・グレアムは、極力早く製品を発表し、ユーザーの反応を見て改善を繰り返すという方法論を採用しています。反復的開発によってリスクを抑えつつ新たなビジネスモデルを見出す「リーンスタートアップ」と共通した考えと言えるでしょう。このような起業を成功させるための方法論を見出したからこそ、Yコンビネーターは高い確率で起業家を成功へ導けるようになったのです。

Yコンビネーターのビジネスモデルはベンチャー投資です。合宿プログラムに参加する起業家からは参加料を徴収しません。1万~2万ドルの資金を提供した上で、10%程度の株式を受け取ります。年間100社以上のベンチャー企業に投資しているものの、Yコンビネーターの収益に寄与するのは、一握りの成功企業だけです。

例えば、Airbnbの評価額は240億ドルにのぼると言われています。もし、Yコンビネーターが5%の株式を所有していたとすると、その資産価値は12億ドルにもなります。つまり、ほとんどの支援企業が失敗に終わったとしても、一部の企業が世界的企業に成長すれば、大きな収益につながるというわけです。

その他のインキュベーター

多くのインキュベーターが世界中で設立され、スタートアップへの投資を促進してきております。これまでに74億ドルを投資してきたYコンビネーターに加えて、17億ドルの「Techstars」、3億ドルの「500Startups」などが知られています。業界に特化したインキュベーターも多数存在し、ヘルスケア関連のベンチャー投資を行う「Blueprint Health」は2000万ドルを投資しています。

米国以外では、ドイツの「Rocket Internet」、イギリスの「Seedcamp」などが存在感を増してきました。また、日本では「オープンネットワークラボ」、「サムライ インキュベート」などが知られています。それぞれのインキュベーターが強みを活かし、異なる視点で起業家の育成と投資の回収を行っています。